ゲーム理論

同じ当せん確率でも分け前は変わる:払戻記録から群衆の選好を読む

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同じ確率で当たる組でも、当たったときの受取額は同じとは限りません。当せん金は発売額や当せん口数によって変わるためです。払戻記録には、数字の形によって当せん口数に偏りがあることが残っています。この記事では、その偏りを集計し、賞金を分ける仕組みを計算します。過去の傾向は測れますが、次回の分け前や「独り占め」を保証できるわけではありません。

当せん金は分け合うもの:確率が同じでも、受取額は口数で変わる

当せん金の原資全体の制約と、選んだ1口の期待受取額は区別が必要です。当せん金額は発売額と当せん口数によって変動します。同じ原資を10口で分ければ1口100万円、20口なら50万円になる場合、当せん確率が同じでも期待受取額は変わります。ただし、どの組を選んでも当せん確率は同じで、人気を避ければ利益が出るという意味でもありません。キャリーオーバーや賞金上限なども考慮する必要があります。

ロト6の記録では、1等が出た1,523回のうち、当せん口が1口だけだった回は588回、38.6%です。2口が411回、3口が227回、5口以上も189回あります。1等が出た回の平均当せん口数は約2.65口。1等が出た回のおよそ5回に3回は複数の当せん口があります。ただし、同じ人が何口か持っている場合もあり、当せん者の人数とは一致しません。

ロト6:1等の当せん口数の分布(第1〜2,129回)
1等の口数回数
0口(キャリーオーバー)606
1口(独り占め)588
2口411
3口227
4口108
5口以上189

1等の当せん口数は、その回の本数字と完全に一致した組が何口あったかの記録です。数字の選ばれ方を調べる手がかりになりますが、購入者の人数や選んだ理由は分かりません。さらに、当せん番号以外のすべての組について販売口数が公開されているわけでもありません。

出典・データ:e-Gov:当せん金付証票法(当せん金の総額の上限) / 宝くじ公式:ロト6のルールと当せん確率 / 集計方法とデータの範囲

群衆の選好は測れる:ρ = −0.42 と、3つのくじで一致する人気数字

売上規模の違いを抑えて回どうしを比べるため、4等口数を5等口数で割った比を使います。各組が均等に買われるモデルで、両等級の期待口数の比は [C(6,4)×C(37,2)]/[C(6,3)×C(37,3)]=9/140≈0.0643 です。実測の比をこの理論比で割った値を「集中度」と呼びます。1より大きければ、3個一致に対して4個一致の口数が多いことを表します。6個すべてが一致する1等の人気を直接測る指標ではなく、実測の比には抽せんや選び方によるばらつきもあります。

集中度 = (4等口数 / 5等口数) ÷ (9/140)

本数字6個の合計値の帯と、集中度・4等口数の中央値(ロト6)
合計値の帯回数集中度4等口数(中央値)
45〜1043591.04717,450
105〜1203601.01615,021
121〜1323540.98814,747
133〜1443610.98313,905
145〜1603550.96813,156
161〜2123400.92911,334

合計値が小さい回ほど集中度が高く、順位相関は ρ = -0.421、p = 3×10⁻⁹²です。誕生日・記念日など1〜31の数字が選ばれやすいという解釈と整合しますが、購入理由の調査ではないため、その原因を確定することはできません。分析記録では、売上規模・経過年・キャリーオーバーを調整した比較や時期別の比較でも同じ向きが残り、ロト7でも同じ傾向が見られました。小さなp値は、この関係が将来の1等口数を正確に予測できることまでは示しません。

連番の有無でも差があります。本数字に連番を含まない回の集中度は平均0.999、含む回は0.981(p = 2.9×10⁻⁶)。この集計で確認できるのは下位等級の口数比の違いです。「連番なら1等の分け前が増える」と判断するには、1等口数や原資を別に検証する必要があります。

7・8・11:くじが変わっても、買う側は同じ

数字ごとの人気度の目安(その数字を含む出目の集中度)を3つのくじで比べると、ロト6とロト7で r = +0.600(p = 8.6×10⁻⁵)、ロト6とミニロトで r = +0.761(p = 6.8×10⁻⁷)、ロト7とミニロトで r = +0.577(p = 6.8×10⁻⁴)。数字の範囲も選ぶ個数も抽せん日も違う3つのくじで、7・8・11はすべて上位8位に入ります。複数のくじに共通する選好の可能性を示しますが、同じ人が買っているかどうかを追跡した結果ではありません。

払戻記録には、数字の選ばれ方を調べる手がかりが残ります。口数の偏りを測ることと、購入理由や次回の分け前を知ることには距離があります。

出典・データ:宝くじ公式:ロト6のルールと当せん確率 / 宝くじ公式:ロト7のルールと当せん確率 / 宝くじ公式:ミニロトのルールと当せん確率 / 集計方法とデータの範囲

ナンバーズに見る人気の格差:ゾロ目の回は口数が5〜15倍

ナンバーズの当せん確率は固定(ストレートは3桁で1/1,000、4桁で1/10,000)ですが、当せん口数は同じではありません。111や7777のように全桁が同じ「ゾロ目」が出た回と、それ以外の回で、ストレート当せん口数の中央値を比べました。発売規模や時期はこの比較では調整していません。

ストレート当せん口数の中央値(口数が正の回のみ)
種類ゾロ目の回それ以外の回中央値の比
ナンバーズ3547口(55回)106口5.16倍
ナンバーズ4466口(8回)30口15.53倍

777が出る確率も123が出る確率も同じ1/1,000ですが、ゾロ目全体とそれ以外を比べた口数の中央値には、3桁で約5倍、4桁で約15倍の差がありました。これは777や7777だけの倍率ではありません。同じ原資なら口数が多いほど1口の受取額は小さくなりますが、実際には発売額も変わります。ゾロ目はボックスとセットを申し込めないという制度上の制約も、口数差を解釈するときに考慮が必要です。

脚注:ボックスの「通り数」は数字の重複で変わる

順番を問わないボックスでも、当せん確率は数字の重複の形で変わります。桁数の階乗を、同じ数字の個数ごとの階乗で割った値が、その数字が対応する並びの数です。1122なら 4!/(2!×2!)=6通り。

ナンバーズ4のボックスが対応する並びの数
数字の例並べ替え理論確率
123424通り24 / 10,000
112312通り12 / 10,000
11226通り6 / 10,000
11124通り4 / 10,000
11111通りボックスは申込不可

出典・データ:宝くじ公式:ナンバーズ3 / 宝くじ公式:ナンバーズ4 / 三菱UFJ銀行:ナンバーズ3の当せん条件 / 集計方法とデータの範囲

賞金分配モデル Q/(1+W) と、平均口数で割ってはいけない理由

自分が当たったとき、ほかの当せん口数を W、その等級の原資を Q とすると、上限を無視したモデルで受取額は Q/(1+W) です。1は自分の口で、ほかに誰もいなくても「原資÷0」にはなりません。

受取額 = Q / (1 + W) (W:ほかの当せん口数、Q:等級の原資)

ここに、直感とずれる点があります。W が回によって変わるとき、「平均の W で割った値」と「W で割った値の平均」は一致しません。受取額は W の凸関数なので、Jensenの不等式により、後者は常に前者以上になります。たとえば W = 0 の回と W = 2 の回が半々なら、受取額の平均は (Q + Q/3)/2 = 2Q/3 で、平均口数1で割った Q/2 より大きい。分け前を評価するときは、場合ごとに割ってから平均します。

(Q + Q/3) / 2 = 2Q/3 > Q / (1 + 1) = Q/2

この計算は、同じ原資 Q のもとで受取額を求めるには、平均の口数だけでなく W の分布が必要だと示しています。どの組で W が小さくなるかや、その分布を正しく推定できるかは別の問題です。原資が回ごとに変わり W とも関係する場合や、賞金上限がある場合には、それらも含めて計算し直します。凸性は平均の取り方についての注意で、特定の組の受取額を決めるものではありません。

クイックピック対自選は、何を比べているか

クイックピックで決まった1組も、自分で選んだ1組も、公平な抽せんなら1等は 1/6,096,454 です。均等な自動選択は特定の好みへの偏りを避ける方法になりますが、実際の販売記録に選択方式の内訳はありません。この集計から「クイックピックのほうが W が小さい」と実証することはできません。自選にも多様な選び方があり、方式名だけで分け前は決まりません。

配分制度は公式説明を参照し、記録との整合も調べました。等級間の原資比(口数×賞金の比)の変動は、ロト6の2等/3等で log 比の標準偏差 0.053、3等/4等で 0.089、ロト7の2等/3等で 0.062でした。原資を口数で割る仕組みと矛盾しない結果ですが、原資比の変動が小さいことだけから制度を確定するものではありません。

出典・データ:宝くじ公式:ロト6のルールと当せん確率 / 集計方法とデータの範囲

人気指標から分配額を判断するには

記録から分かったのは、合計値や連番などの形により下位等級の集中度が違うことです。これを数字選びに使うには、その違いが将来も続き、1等口数にも同じように影響するかを確かめる必要があります。理論で分かる確率、過去に測った集中度、まだ予測が必要な分配額を、順番に整理します。

数字の形について、確かめられた範囲(ロト6)
形1組の当せん確率過去の記録から言えること
6個すべて32以上1 / 6,096,454日付に使えない数字だが、この条件だけの将来の1等口数は未検証
連番を含む1 / 6,096,454平均集中度0.981。1等の分配額の改善率ではない
合計値161以上1 / 6,096,454平均集中度0.929。売上や時期を揃える前の記述集計

被りやすさチェッカーでは、この集中度を1等口数へ換算するモデルも試しています。時系列を3か所で区切り、それ以前の記録だけでモデルを作って直後の期間を評価すると、ロト6では1等が0口になる割合を過小に予測し、ロト7では集中度の説明力が弱い結果でした。過去の平均的な傾向を捉えることと、各回の分配を正確に見積もることは同じではありません。出典リンクに全期間の検証表を掲載しています。

受取額の期待値を出すには、さらに発売規模、繰越額、等級別の原資、賞金上限、自分が持つ当せん口を含めた配分を扱います。少ない当せん口数を予測できても、上限によって受取額が増えない場合があります。また、数字の選ばれ方が変われば過去の係数もそのまま使えません。現在の集計で分かるのは過去の口数の偏りまでで、組ごとの将来の受取額を順位づけるには、まだ材料が足りません。

この記録が示したのは、同じ当せん確率でも当せん口数には偏りがあることです。その偏りを将来の受取額に換算するには、集中度の相関だけでは足りません。

出典・データ:宝くじ公式:ロト6のルールと当せん確率 / 集計方法とデータの範囲 / 被りモデルの時系列検証