確率のバグ

610万回買っても63%、30個買っても9.7%:箱の大きさと中の1組

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ロト6の1等は 1/6,096,454。分母と同じ610万回なら当たりそうな気がしますし、43個中30個もマークすれば当たりに近づいた気もします。低中高を2個ずつにすると当たりやすそうにも見えます。こうした感覚には共通の出発点があります。「その形に入る組み合わせの箱が大きい」ことと、「自分の1組が当たりやすい」ことが、直感の中で重なりやすいのです。

分母の極限:N 回引いても 1−1/e

ロト6は1〜43から異なる6個を選び、順番は区別しません。組み合わせの数は 43×42×41×40×39×38 を 6! で割って 6,096,454。1口が1等になる確率はこの逆数です。では毎回1口を6,096,454回買い続けたら、必ず1等になるでしょうか。

N 回のうち少なくとも1回当たる確率 = 1 − (1 − 1/N)^N → 1 − 1/e ≈ 63.2%

当たらない確率は毎回 (1−1/N) で、それが N 回続く確率は (1−1/N)^N。N が大きいとき、この値は自然対数の底 e の逆数 0.3679 に収束します。つまり分母と同じ回数だけ買っても、一度も当たらない人が約37%残ります。「N 回買えば期待回数は1回」は正しいのですが、期待回数1回と確率100%は別物です。

毎回1口を買い続けたとき、一度以上1等になる確率(ロト6)
購入回数分母 N に対する倍率一度以上当たる確率
2,129回(26年間の全抽せん)0.00035倍約0.035%
6,096,454回1倍約63.2%
約1,400万回2.3倍約90%
約2,808万回4.6倍99%

99%に届かせるには、分母の4.6倍、約2,808万回が要ります。1口200円なら約56億円。ロト6は26年で2,129回しか抽せんされていないので、毎回1口の人が26年で1等を一度でも引く確率は約0.035%です。ミニロトですら1等は 1/169,911、本数字3個の4等でも 1/52.3 なので、毎週1口では4等の初当せんまで平均約1年かかります。

同じ組を10口買っても、当たる出来事は1通りのままです。違う組を10口買って初めて、分子が10になります。1−(1−p)^n の n は「回数」ではなく「異なる組を買った延べ数」で数えてください。

出典・データ:宝くじ公式:ロト6のルールと当せん確率 / 宝くじ公式:ロト7のルールと当せん確率 / 宝くじ公式:ミニロトのルールと当せん確率

連番は珍しくないし、同じ組はまだ一度も出ていない

連番を含む組は、全体の半分以上

1・2・3・4・5・6 も、2・11・18・27・34・43 も、指定した1組としては同じ 1/6,096,454 です。6個すべてが連続している組は38通りしかなく、確かに珍しい。しかし「どこかに隣り合う数字が1組以上ある」は、2・3・14・23・32・41 も含むずっと広い箱です。

連番がない6個を小さい順に x₁ < … < x₆ とし、yᵢ = xᵢ − (i−1) と置き換えると 1 ≤ y₁ < … < y₆ ≤ 38 になります。対応は一対一なので、連番なしの組は C(38,6) 通り。一般に1〜n から k 個なら、連番なしは C(n−k+1, k) 通りです。隣同士を離すための隙間 k−1 個を、先に取り除いて数えています。

連番を1組以上含む割合 = 1 − C(38,6)/C(43,6) ≈ 54.72%

本数字に連番が1組以上ある割合(理論と実測)
種類理論実測
ロト654.72%54.30%(2,129回)
ロト774.46%73.91%(690回)
ミニロト52.49%52.64%(1,400回)

連番を避けると、候補の過半数が選択肢から外れます。残った組も連番を含む組も一つひとつは同じ確率なので、当たりやすさは変わりません。変わるのは、連番を避ける人が多いぶん、連番を含む組で当たったときの分け前が厚くなる方向だけです。

誕生日問題:227万ペアを総当たりして、重複はまだゼロ

「一度出た組はもう出ない」という感覚も、同じ箱の見方で整理できます。次回のロト6で前回の6個がそろう確率は、ほかの特定の1組と同じ 1/6,096,454 で、使用済みマークは付きません。一方で、過去2,129回のどこか2回が同じかを見る比較ペアは N(N−1)/2=2,265,256組あります。誕生日が同じ人を集団から探すのと同じで、探す組数が増えるほど一致の機会は増えます。

重複ゼロの確率 = (1−1/M)(1−2/M)…(1−(N−1)/M) / 平均ペア数 = C(N,2)/M (M = 6,096,454)

ロト6の2,129回では平均約0.372組、重複ゼロの確率は約69.0%で、実際の重複は0組。理論どおりです。候補が31個しかないミニロトは1,400回で平均約5.76組が期待され、実際に5組が一致しました。そしてロト6では、6個中ちょうど5個が一致する回のペアが75組あります。「あと1個で前と同じ」は、総当たりすればいくらでも見つかります。

出典・データ:宝くじ公式:ロト6のルールと当せん確率 / 宝くじ公式:ロト7のルールと当せん確率 / 宝くじ公式:ミニロトのルールと当せん確率 / 集計方法とデータの範囲

「カバー」と「型」を、箱の大きさで読む

30個マークしても、1等は5通りしか買っていない

6個入りの口を5口、数字が重ならないように買うと、43個のうち30個を使います。1等になるのは、抽せんの6個がその5口のどれかと完全に一致したときだけです。

5口が1等になる確率 = 5 / 6,096,454 ≈ 0.000082%

一方で「30個のなかに本数字6個が全部入る」確率は C(30,6)/C(43,6)=593,775/6,096,454≈9.74% あります。この9.74%は30個で作れる593,775通りの箱の話で、買った5口とは無関係です。箱の中のほとんどの組は、買っていません。

選ばなかった13個の側に本数字6個がすべて入る確率は C(13,6)/C(43,6)=1,716/6,096,454≈0.028%、約3,553回に1回です。珍しい出来事なので、起きた回はかえって強く印象に残りやすいかもしれません。13個の側を押さえるには全組み合わせ1,287口、257,400円が要り、それでも1等はその1,287通りのどれかが出たときだけです。同じように30個を組み合わせですべて押さえるには593,775口、118,755,000円が要ります。5口1,000円で押さえているのは、そのうちの5通りです。

カバーの極限は全通り買いです。6,096,454口をすべて買えば1等は確実ですが、費用は約12.2億円。1等の上限はキャリーオーバー時でも1口6億円で、下位等級を合わせた回収率は、繰越額が最大級の回でも7割台に届きません。ロトは売上の一部が当せん金に回る仕組みなので、箱を丸ごと買うと、費用が払戻を上回ります。カバーの数理は、当たりやすさよりも、当せん金の配分の仕組みを読むときに役立ちます。

2-2-2型は「よく出る」。だからといって中の1組は当たりやすくない

1〜43を1〜14、15〜28、29〜43の3帯に分けると、6個が各帯2個ずつになる組は全体の14.3%で、実測は15.0%です。奇数ちょうど3個は理論33.6%、実測32.9%。合計160〜190の「ヘビー型」は理論15.3%、実測14.5%で、合計の平均は理論132、実測132.4です。

ロト6で「よく言われる型」の理論と実測
型理論実測
帯が2-2-214.3%15.0%
奇数ちょうど3個33.6%32.9%
連番が1組以上54.7%54.3%
下一桁の重複あり78.6%79.7%
高帯(29〜43)が1個以上93.8%93.8%
合計160〜19015.3%14.5%

理論と実測はすべて隣り合っています。つまり「2-2-2がよく出る」は本当で、それは2-2-2の箱に入る組が約87万通りと多いからです。箱が大きいから、結果をあとから見ると2-2-2が目立つ。しかし箱の中の特定の1組が当たりやすいわけではありません。型を守った6個も、誕生日の6個も、分母は同じ 6,096,454 です。

特定の1組の確率 = 1 / C(43,6) = 1 / 6,096,454 (どの型に属していても同じ)

出典・データ:宝くじ公式:ロト6のルールと当せん確率 / SciPy公式資料:超幾何分布の定義(英語) / 集計方法とデータの範囲

箱の大きさと、自分が買った1組

この記事で扱った話題を一列に並べます。「610万回買えば当たる」は、期待回数1回と確率63%の違い。「30個マークしたから当たる」は、593,775通りの箱と買った5口の違い。「連番は珍しい」は、38通りの全連続と54.7%の箱の違い。「2-2-2型が当たりやすい」は、87万通りの箱と中の1組の違い。「一度出た組は出ない」は、次の1回と227万ペアの総当たりの違い。どれも、箱の大きさと1組の確率が重なって見えやすい場面です。

判定の手順は一つです。ある主張を聞いたら、「それは何通りの組に当てはまる話か」と「自分は何通り買ったか」を分けて数える。前者が大きくても、後者が変わらなければ当たりやすさは変わりません。

箱が大きいことは、結果を眺めるときの見え方を変えます。買った1組の確率は変えません。

型や連番やカバーは、1組の確率こそ変えませんが、過去の結果を眺めるときの切り口としてはどれも面白いものです。箱の大きさを知っていれば、「2-2-2がよく出る」という観察を正しい意味で楽しめます。同じ計算を「他の人とどれくらい重なりやすいか」に当てはめれば、当たったときの分け前という、組によって実際に違いが出る量も読めます。箱の数理は、そうした読み方の道具になります。

出典・データ:宝くじ公式:ロト6のルールと当せん確率